研究テーマ
生活習慣病の新たな発症メカニズムの解明と治療法の開発
目標
膵β細胞や褐色脂肪細胞、腸管細胞の機能異常は、糖尿病やメタボリックシンドロームの原因となることが知られています。私たちの研究室では、糖代謝制御の要となる、これらの高次機能細胞の恒常性維持のしくみについて、分子レベルでの理解を目指しています。とくに、遺伝子改変マウスを駆使することにより、発生生物学、亜鉛シグナル、オートファジー、細胞極性の観点から、その恒常性維持機構の全容解明に取り組みます。これらの基礎研究を基盤として、病気の新たな発症メカニズムの解明と革新的な治療法の開発を目指します。
現在進行中のプロジェクト
①膵β細胞の発生・再生・脱分化からみた糖尿病の研究
膵島には主に4種類の内分泌細胞が存在する。その協調的な働きは、糖代謝維持に重要であり、その機能は内分泌細胞の発生・分化機構と密接な関係がある。β細胞をはじめとした、膵内分泌細胞の発生・再生のメカニズムの解析を通して、糖尿病の発症機構解明と再生治療の開発に貢献したい。
②生活習慣病における亜鉛シグナルの役割解明
亜鉛トランスポーターを介して細胞内外に転送される亜鉛イオンは、様々な細胞機能を調節するシグナルとして機能することが明らかになってきた。我々はこれまでに、ZnT8に依存して膵β細胞からインスリンとともに分泌される亜鉛が、肝臓においてインスリン分解を制御することを明らかにした(Tamaki et al. JCI 2013)。亜鉛トランスポーターを切り口に、生活習慣病における亜鉛シグナルの役割解明に挑みたい。
③生活習慣病におけるオートファジーの機能解析
膵β細胞でオートファジー誘導に必須の遺伝子Atg7を欠損するマウスは、ブドウ糖応答性インスリン分泌の低下や、高脂肪食負荷時におけるβ細胞量の代償性増加不全など糖尿病に特徴的な表現型を示す(Ebato et al. Cell Metab 2008)。諸臓器におけるオートファジーの機能不全が全身での糖代謝の異常を引き起こす可能性がある。オートファジーの視点から生活習慣病の病態解明に挑みたい。